『ようきなやつら』
【むかし、どこかに半分置き忘れてきたお化けの魂。ここにあったのか。 京極夏彦】
WEB上で話題騒然の岡田索雲妖怪読切シリーズ、待望の単行本化!! 描き下ろしの表題作『ようきなやつら』40P収録!!
怪異なのは、この物語か。それとも、我々が生きるこの世界か。
WEBにもちょいちょい公開されていた作品があったので気になっていたのですが、こちらの単行本を恒例のdigで見つけたので読んでみることに。
漫画であって漫画でない。漫画でしか出来ないようなことをしているのに、漫画では見たことがないような読後感。
そうとしか説明できないようなお話の連作なのですが、それら全てに共通しているのが”妖怪”という、日本的であり、異端である存在。
ちなみに妖怪とは
妖怪(ようかい)とは、日本の伝統的な民間伝承や信仰に登場する超自然的な存在や現象を指します。妖怪にはさまざまな種類があり、人々の生活や自然現象に結びついたものが多いです。以下に特徴を挙げます:
主な特徴
形態や性質の多様性動物や人間に似た姿を持つもの(例:天狗、河童)。
物体や自然現象が擬人化されたもの(例:一反木綿、雷獣)。
善悪の曖昧さ人に害を及ぼすものもあれば、助けてくれるものもいます。
起源古くから伝わる神話、民間伝承、または自然への畏敬の念から生まれたとされています。
文化的影響江戸時代には妖怪絵師(例:鳥山石燕)による妖怪図鑑が流行しました。
現代ではアニメや漫画の題材としても人気があります(例:『ゲゲゲの鬼太郎』)。
知ってはいるけど、改めて説明されるとこういうものなのかと思いますよね。
そんな妖怪をモチーフと言うか擬人的に仕立て上げ、人が生きる世界をあり得ない角度から描いていく。
このあり得ない角度が本当にあり得なくて、故に独特な漫画に仕上がっているわけです。
妖怪という存在にギョッとさせられるようなプロットはほとんど無く、むしろ人間にこそギョッとさせられるところの方が多い。
異端であるが故に排除されたり、差別されたりということが常な世の中において、あくまでも我々がそう感じることさえ、マジョリティ側である人間であるからこそ。そんな至極当たり前に感じている価値観へのカウンターに溢れた本作。
良いとか悪いとか、正しいとか正しく無いとか、個別の枠組みがあるはずなのに、実際にはそれも大きな枠組みの中にある。正当化することで正解を持っていると勘違いしているような衒いすらあるのが人間社会という構造。
そうした欺瞞的な人間の愚かさを、妖怪という存在を通して鏡写しにすることで逆に見せるという面白さ。
さらに展開の中での構図、コマ割りなども独特で、印象的な画が多いというのも特徴。
何よりも物語の面白さが突出しているんですよ。
単に面白いというわけでは無く、目の付け所、それを作品にする構成力、よくわからない世界を見せられているようで、それは現実の世界でもあるような気がする。
この世界の歪さを妖怪を通して可視化するような。
『追燈』という作品などは見たことない展開と帰結に驚かされました。
それからタイトルにもなっている『ようきなやつら』。
タイトルが出た時のカッコ良さ。それまでの話が伏線となっている素晴らしさ。思わず「おおっ」って声を上げてしまうくらいに映像的であり、漫画的でもあり。
画のインパクト、そこからの流れも完全に少年漫画のそれで、今までの込み入った話がぶっ飛んでしまうほどただただカッコ良い。
一つ一つの話が独立しているようで全てが連綿と繋がっているような終着の仕方が堪らなく、最後の読後感は極めてすっきりとしている。
妖怪をモチーフにして、こんな変な短編が描けるなんて、長編も見てみたいなと思ってしまう。
では。
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