『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
黒社会が覇権を争う九龍城砦で男たちが繰り広げる死闘を描き、香港で大ヒットを記録したアクション映画。
1980年代。香港に密入国した青年チャンは、黒社会のルールを拒んで己の道を選んだために組織から目をつけられてしまう。追い詰められた彼は運命に導かれるように、黒社会に生きる者たちの野望が渦巻く九龍城砦に逃げ込み、そこで出会った3人の仲間たちと深い友情を育んでいく。しかし九龍城砦を巻き込む抗争は激化の一途をたどり、チャンたちはそれぞれの信念を胸に命をかけた戦いに身を投じる。
「SPL 狼たちの処刑台」のルイス・クーが主演を務め、サモ・ハン、アーロン・クォック、リッチー・レンら豪華キャストが集結。「ドラゴン×マッハ!」のソイ・チェン監督がメガホンをとり、5000万香港ドル(約9億円)をかけて制作した九龍城砦のセットで撮影。「るろうに剣心」シリーズの谷垣健治がアクション監督を務め、「イップ・マン」シリーズの川井憲次が音楽を手がけた。
古き良き香港映画のそれ。
ルックからしてそうですし、まず冒頭ですよ。あのB級感満載のオープニング。
香港映画きたと思わせるのに十分なスタート。そこからの見せ方も外連味たっぷりで、遠慮の無いド派手さ。そしてそれこそが香港映画の正義。
アクションシーンもそうですし、物語上の演出、つなぎにしてもそう。細かいことはご愛敬な潔さ。
あれが痛快なんですよ。
普通に死なないし、倒れない。
なんかそういうザクッとした、良い意味での雑さがたまらんのですわ。
今の映画ってしっかりと作られ過ぎているというか纏まり良く、映像的な破綻も無い、いわゆる整った作品が主流だと思うんです。
でも、映画の本質ってやっぱり圧倒的な熱量だったり、力で押し切られる感じも欲しい。
「おおっ」と思わず言ってしまうような、作品に宿るパワーも間違いなくあるんじゃないかなって。
アクション部分にその圧倒的面白さが詰まってますし、中盤での物語を膨らませるエピソードなども含みがあって丁度良い。
唐突ゆえ、物語の間が飛ぶこともしばしあるが、もうそんなのいいじゃないですかと思わせる起伏さ。
設定とキャラクターの魅力が詰まっていればこそ成せるところなのかなと。
ちなみに設定における場所からしてまず面白いところではあるのですが、その場所について補足を。
九龍城(カオルーン城、九龍城砦)は、かつて香港に存在した小さな都市のような地域で、特にその密集した建築と独特な歴史で知られています。以下に概要を説明します:
歴史と特徴
起源: 九龍城は元々中国の軍事要塞として19世紀に建設されました。しかし、1842年の南京条約で香港島がイギリスに割譲された後、この地域は中国の管理下に残りました。その後、英国と中国の曖昧な統治の隙間をついて、無政府状態のような独特のエリアとなりました。密集した建築:
九龍城は「世界で最も人口密度が高い場所」とも呼ばれ、建物が極めて密集していました。高層のアパートが無秩序に建てられ、外壁がほとんど接するほど隙間が少なく、内部は迷路のようになっていました。昼間でも日光がほとんど入らず、ネオンや裸電球で照らされる独特の景観が特徴的でした。無法地帯:
九龍城は法の支配がほとんど及ばない場所として有名でした。特に20世紀中頃には、犯罪組織や麻薬取引の温床とされることもありました。一方で、そこに住む人々の間には独自のコミュニティが形成され、雑貨店や診療所、学校なども存在しました。解体と再開発
1993年から1994年にかけて、香港政府は九龍城を完全に取り壊しました。その跡地には「九龍寨城公園」という公園が建設され、九龍城の歴史を伝える展示や遺跡が残されています。文化的影響
九龍城は、その独特な環境と雰囲気から、映画やゲーム、アート作品に多大な影響を与えています。特に、サイバーパンクやディストピア的な作品でそのイメージが再現されることが多いです。
もう取り壊されてしまっているので見ることは出来ませんが、再現性が高く、かつあの中を縦横無尽に撮影し、動き回れるというのはセットならでは。
製作費は3億香港ドル超え。香港映画界最強キャスト陣が集結し、製作費の1/6とも言われる5000万香港ドルをかけて九龍城砦のセットを作り上げました。
アクションに関してもこんな記述が。
――最近のアクション映画は編集で繋ぐ作品が多い印象です。でも、香港映画は“全てのアクションを撮る”のが伝統ですし、今回はその魅力をこれでもかと体感できました。
僕がアクションに求めていることは、スピードは速いけども、何をやっているのかはわかるということ。何をやっているのかわからないなら、単に刺激的な場面なら簡単に作れるじゃないですか? そうではなくて、速いけどもわかるようにしたいと思っています。
アクション監督を日本人の谷垣健治さんが務めており、22歳から香港に移住し、アクションを学んだだけのことはあるなという説得力。
キャラクターも魅力的な方が多いんですよね。
中でも龍捲風演じるルイス・クー。
抜群にカッコ良く、佇まい、いで立ち、存在感のある役柄がピッタリとマッチしている。
冒頭の床屋でのシーン、手際の良いあしらいからの煙草を吹かすカッコ良さ。
たまらん。
そこからの人物造形を語るエピソードなども、丁寧に彼の人となりが知れ、さらにカッコ良く見えてくる。
寡黙で仁義を重んじるキャラクターが説得力を持って強いって、何よりも説得力あるじゃないですか。
他の人物にしろ、その辺の魅力が溢れた方が多い多い。
雑魚と思っていたやつがこんな強いっていうのもネタですし。
何度も登場するセリフ「硬直」も最早ネタでしかない。使いたくてしょうがないパワーワードと気功の凄さを感じさせられるという。
ハチャメチャなんですが、その辺は受け入れられ見れてしまう摩訶不思議香港映画。とにかく何も考えずに観れる。それでいてスカッとするし、感動もする。
感慨深いところもありつつ、久方のTHE香港なアクションを満喫するには、シチュエーション含め最高に楽しめる作品に仕上がっているかと思います。
余談ではありますが、本作は続編も制作予定とのことですので是非期待して待ちましょう
では。