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『恋愛とは何か』愛のとろ火に秘められた真実

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『恋愛とは何か 初めて人を愛する日のために (角川文庫)』

初めて人を愛する貴女へ。

愛についてのエッセイ・方法論は数多い。本書は豊かな恋愛経験と古今東西の文学に精通する作者が、わかりやすく男女間の心の機微を鋭く解明した、全女性必読の愛のバイブル。

この年になると、徐々に恋愛の本質に気付かされてくると言いますか。

でも、言語化すようとするとそれは難しくも有り、わかっていないことを知らされたりもするものなのだと。

遠藤周作というと映画、『沈黙』などから知ったわけですが、視点、考察が知に富んでいるという印象の人。

これまたディグっていた時にたまたま見つけた恋愛指南書ならぬ本書のようなものも書くのかということで手に取ったのがキッカケではあるのですが、これが中々に興味深い。

刊行されたのが昭和47年と50年近く前の書籍ながら、恋愛における考察の視点というのは現代とほとんど変わらず、人間というもの、恋愛というものの本質が大きく変わらないことに驚かされる。

恋愛を語るうえで、必ず出てくると言っても過言でない事柄が”恋”と”愛”というもの。

この違いがわかるようでわからない。

当然、色々な経験からざっくりとした感覚はわかっているんですよ。

その辺にも当然切り込みつつ、著者の見識にある過去の名著を引き合いにした独自の恋愛論を、分かりやすく、現実に即した形でデフォルメして語ってくれるところも非常に読み易く、共感できる。

男性と女性、年代による違いなどにも言及し、それぞれの形での示唆に富んだ話が展開されていくのも興味深かった。

個人的に一番印象深かったのが「恋愛というのが強火としたら愛というのはとろ火」というもの。

とろ火という極めて絶妙な火加減にあって、消えるか消えないか、ローパワーであるにも関わらず火としての役割を決して失わないようなギリギリの塩梅が実にしっくりくるなと。

何を求めるかは人それぞれだし、正解も当然存在していないわけです。

だからこそ、その曖昧さを楽しめるというのも必要な余白かもしれないと思わされてくる。普段考えることが少ない恋愛という物事を考えるキッカケとしても良き時間でした。

面白い物語が書ける人は何を書かせても面白い。そんな一冊。

それでは。


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